◎4 フリーランスの場合

オーケストラにも入れず、教職にも就けない、となるとオーケストラの楽器の場合やはりフリーの演奏家として活動するしかありません。
その昔、バブル経済真っ只中の頃、それでも音楽で生きていくのにはフリーで演奏するのが最もよく儲かったのです。仕事がいくらでもあったので、あえてオケには入らず、フリーランスの道を選ぶ人も沢山いました。
そう言う私も、学生の頃はフリー紛いのことをずいぶんとやらせて頂きましたが。

フリーの仕事としてはオーケストラのエキストラとして演奏すること。昔、地方オケでは正団員を雇うよりエキストラを雇ったほうが遥かに経済的だったため、演奏会ごとにエキストラ(業界用語では“トラ”といいます)を雇う方法が多くとられました。

他には録音の仕事。これが実際、最も実入りが良かったのです。仕事の内容として、CM、テレビやラジオ放送のBGM、カラオケ、など仕事は無数にありました。芸能プロダクションに所属して録音の仕事ばかりする、いわゆるスタジオミュージシャンも多数存在しました。今でも関東地方では数多く活動されていると聞きます。

その他の仕事としてはパーティー(代表的なのは結婚式の披露宴)、今は聞きませんがキャバレーでの演奏など酒場での演奏もありました。
もうひとつ忘れてはならないのが、学校コンサートのグループでの演奏。昔、学校公演は最近まで盛んに行われ、それ専門のオケも多数存在しましたが今は小中学校の教育要領も変わり、その仕事は減っているようです。午前中だけの拘束なのでとても効率の良い仕事として大人気でした。シーズン中は学校公演の収入だけでもオーケストラの月給よりも多かったほどです。
その他、えり好みさえしなければ仕事は無数にあったのですが、今はどうでしょうか。
録音技術の向上で少人数の演奏を大人数に聞こえさせることなど簡単なことで、弦楽アンサンブルの出番など本当に少なくなりましたし、シンセサイザーの発達でますますアナログの音は過去の物になりつつあります。
バブル崩壊以降、パーティーの仕事も、金がかかるということが理由で最近はめっきり数か減っているとの事。フリーの仕事の数は確実に減少しています。
しかしその半面、全国の音大や芸大からは毎年無数のプレイヤーがプロとして卒業します。申し上げたように、それを受け止める受け皿が全く足りていない現状に危機感を抱くのは私だけでしょうか?
某私立芸大の学長が学生獲得のため吠えるように、“皆さん、芸術で飯は食えるのですよ!”とは私自身、口が裂けても言えない言葉です。

終わり