其ノ四

チェロはバイオリンに比べるとヴィブラートがかけやすい、とは言うものの、普段の生活では全く使わない動作を使用するため、やはり初心者はかけるのに一苦労するものです。無理にかけようとすると肩や腕、手首に余分な力か入ってしまい、楽器そのものにヴィブラートがかかってしまうということも。
そんな時はたいてい、肘から先、手首を弦と平行に動かそうとしていることが多いものです。手首は横には動かし難いので、どうしても身体に力が入ってしまうのです。しかしドアをノックするときの手首の動きを思い出してください。とても自然にドアを叩いていることに気が付きます。肩から肘、手首に至るまで完全に力が抜けているはずです。

それでは、どうすればドアをノックするときのような自然な腕の動きを体験できるでしょうか。

まず、チェロをギターのようにネックを左に、右膝に構えて下さい。次に左手の親指を、ネックに引っかけます。引っかける場所は今は適当で結構です。引っかけている親指は決してズレてはいけません。しかし、力が入らないように!
手の平は軽く右に(高音側に)向けます。弦と平行になってはいけません。

そして肘から先を軽くリズミカルに振ってみてください。肘は絶対動かさないで!
その時、肘から親指に至るラインは、回転する車のワイパーの軸のような働きをしていることに気が付くはずです。そう、《ヴィブラートとは往復運動ではなく回転運動》だったのです!
ですから、回転軸である肘が動いたり、親指がズレたりしては駄目なのです。また、親指がズレたり離れてしまえば、音のツボがズレてしまうので、特に初心者は注意が必要です。
この練習中は身体のどこにも力が入らないように、指先までしなやかに振動が伝わるまで根気よく続けます。
指先までしなやかに振ることができるようになれば、指先を次第に丸くしていきます。

次に、丸くなった1から4までの指を弦上に移動させ、さらに回転を伴うリズミカルな動きを続けます。

つづく