◎ 私は今現在、自分の音楽生活をどのように感じて過ごしているのか。
私自身、40年近くチェロ演奏及び指導を生業にしてきましたが、今が最も精神的にも充実して活動できているような気がします。

20歳代は活動の中心がほぼオーケストラに限られていました。演奏は皆についていくだけ。オケマン、特に弦楽器のテュッティ奏者(その他大勢)はオーケストラ内では一兵卒に過ぎず、個人的な感情や趣味を表に出すこともこともできない、言われた通りただ悶々とチェロを弾き、生きるために日々をやり過ごす、その苛立ち。
留学を経てフリーになってもその生活には大差なく、自分に対する苛立ちや将来への不安で心は潰されそうになっていました。教える方も、オーケストラなどの仕事の合間にやるわけですから、いわゆる片手間、大したこともできません。
それまで激務を極めたオーケストラなどフリーの仕事が一段落した頃から、ある地方の音楽教室で教え始めました。約15年は教えたかも知れません。
各音楽教室にはそれぞれ教育の方針があるものです。教師はその方針に沿って教えなければならないので、なかなか自分の思い描いている理想通りのことを教えるわけにはまいりません。

そのような苦しい活動を経て、やがて多くの方々の協力を得、近年やっと自分が目指す音楽が実践できる場にたどり着くことができました。それが現在の川内昌典チェロ教室なのです。
現在、教える事に活動の的を絞っているのですから、片手間に教えるのとは異なり、一人ひとりの生徒に対して沢山の手間をかけることができます。何よりも各生徒の個性を活かせ、大きな計画の元にレッスンを進めることができます。片手間だとどうしても教える内容も思いつきやその場の雰囲気で教えてしまうことが多いものです。
ですが嬉しいことに、今、私のレッスンを受けている生徒達は皆個性を伸ばし、音楽を楽しみ順調に育ってくれています。有り難いことです。
本当の芸術家が当教室からたくさん育ってくれるのが私が描いている今現在の夢であり希望なのです。

終わり