◎ 続き  ドッツアウアーのエチュードを使って

ドッツアウアーのエチュード(音楽の友社版)第1番はスラーは全く無く、全音符、付点二分音符、二分音符、四分音符なデターシェだけで書かれておりますが、この曲を全て全弓で弾かせるという練習方法も考えられます。つまり4種類の異なる弓のスピードを体感させるという練習です。もちろんフォルテもピアノも無視します。これも考え方によれば効果があるのかも知れませんが、この曲も単純ながらも一応は曲になっています。フォルテやピアノなどのニュアンスも書かれていますので、それらを全く無視してボウイングの速さだけの訓練に使うというのは、いささか抵抗があります。
こんな曲でも、あくまでもフォルテはフォルテの、ピアノはピアノとしての弓の位置や配分を確認し練習するためにだけに使用されるべきだと思います。
またフォルテにもマルテラートのように弓の元ではっきり区切るフォルテもあるでしょうし、ピアノで弾く場合も弓先で羽のように軽快に弾かれるものや根元で指のクッションを利用してねっとりと弾かれるものもあるでしょう。それを無視して、ある曲を単に弓の速さの訓練だけに利用するなど乱暴な話ですよね!

続く第2番も譜面面から見ると八分音符ばかりで一見左手だけの練習のようには見えますが、書かれているフォルテやピアノ、クレッシェンドやディミヌエンドなどを正確に引き分けようとすれば、けっこう難しい練習になりますし、弓の位置を弾き分けるためにはとても良い練習になります。
八分音符の連続で弓の奏弦位置を根元から先に、あるいは先から根元へと自由に移動させるのはとても難しいことですが、芸術作品を演奏する上では絶対に欠かせないテクニックです。

この曲のように規則的に並んだ音符の連続で、いかに弓の奏弦位置を変化させていく実力に結実させていけるかは練習曲の使い方の工夫次第、奏者の心意気次第です。
 

終わり