◎2 初歩の教材 続き

初歩の教材について、レッスンで私はもうひとつ心掛けていることがあります。
それはできるだけたくさん生徒とデュエットをすることです。ピアノとでもいいのですが、やるなら教師とのチェロデュエットが上達には効果的です。同じ楽器なら音も混ざり合いやすいですし、どんなに簡単なフレーズでも合わせることによって自分のピッチの悪さも気がつきやすいという利点があります。また自分の音が自然に教師のチェロの響きに取り込まれてしまい、合わせている時は知らず知らずに生徒自身の音も格段に良くなっているということを生徒自身が実感できれば、上達もより早くなります。 ちょうど自転車の補助崘と同じだと考えていただいて結構です。
というわけで私のレッスンではデュエットに重きを置いております。
世間にはデュエットなど合奏は一切無し、もっとひどい場合は楽器無しでレッスンをされている先生もおられますが、私にはそれでまともなレッスンが成り立つのか、生徒を導くことができるのかが全く理解できません。

◎初歩のためのデュエット

そこで私がレッスンの時によく使うデュエットの曲を紹介します。初歩の段階では、なんといってもセバスチャン・リーの“とても易しい22のデュエットOp.126”が素晴らしいです。とても良く響きます。技術的にはとても簡単ですがメロディーもハーモニーもとても美しく書かれていて、何度合わせてもその都度合奏する喜びが味わえます。全編一部を除いて1stポジションだけで十分弾くことができますが、もう少し進んだ生徒のために、ハーフポジション、2ndや3rd、4thなどのポジションを導入することも可能です。7番目の曲などとてもメロディーが美しいのでヴィブラートの導入としても利用する価値はあります。

その他としてヨゼフ・ライナグル(エディション メックで出版されています)のデュエットが優れています。特に第8番など1stポジションにおける効率的な左手のテクニック習得には最高の教材になります。

ボアモルティエの二つのチェロのためのソナタ集もとても良いですね。

これらの曲の特徴は全てチェロ奏者がチェロのために書いた曲であるということ。これは大切なことです。チェロ弾きがチェロのために書いているのでテクニックや響きに無駄がなく、楽しんで自然に上達できるようになっているのです。勿論、教師の正しい指導は不可欠ではありますが。

編曲物もたくさん出版されてはいますが、響きが不自然であったり編曲が幼稚であったり、納得できるものは極わずかなのが現状です

ポジションの練習としてはリック・ムーニーのポジション練習曲集を時々使っています。
面倒なポジションの問題を効率的に系統立てて書かれていますので、無理なくポジション感覚を体得できるように書かれています。なお、この曲集にはハーフポジションの練習課題が沢山出ていて、普段どちらかというと、おろそかになりがちなハーフポジションがしっかり身につくように編集されております。
 曲はデュエットで書かれているのですが、曲があまり面白くないのが難点です。それと、隣のポジションへの移動の練習やポジションの跳躍の練習課題が少ないことも欠点です。
なお、リック・ムーニーの作品には親指の練習曲集も出ています。

続く